pro5詩:田中宏輔さんツイッター:田中宏輔 @atsusuketanaka フォト・アート:羊谷知嘉さん ツイッター:羊谷知嘉 Chika Hitujiya @hail2you_cameo ツイッター:Engineerism @Engineerism 0ORDINARY WORLD° 「物分かりのいい子ね」とドリーンがニヤリとしたとき、誰かがドアを叩く音がした。 (シルヴィア・プラス『ベル・ジャー』1、青柳祐美子訳) 「どうぞ!」とドニヤ・カルロータはケイトに言った。 (D・H・ロレンス『翼ある蛇』上・10、宮西豊逸訳) あのときもチャーリイ・クラスナーと灰色の明け方に押しかけたのだった。 (ジャック・ケルアック『地下街の人びと』真崎義博訳) 「グレーゴル? 気分よくないの? なにか必要なものある?」 (カフカ『変身』丘沢静也訳) 老いた膝をぽきぽきと鳴らしながら、スリーンはゆっくりと中腰になって花を見た。 (R・C・ウィルスン『無限記憶』第二部・8、茂木 健訳) 「何をクスクス笑ってるの?」とアリスが洗面台から振りかえって言った。 (パトリシア・ハイスミス『愛の叫び』小倉多加志訳) 「とってもきれいだね」モンドが言った。 (ル・クレジオ『モンド』豊崎光一・佐藤領時訳) ダニエルは傍聴人たちを見つめた。 (ギ・デ・カール『破戒法廷』II、三輪秀彦訳) ブラドレーはまばたきした。「なんでしょう?」 (R・A・ハインライン『異星の客』第二部、井上一夫訳) 「シャワーを浴びるのはどう?」エリカが尋ねた。 (カミラ・レックバリ『悪童』富山クラーソン陽子訳) 「たとえば、こんなふうに?」ナタリがたずねた。 (ダン・シモンズ『殺戮のチェスゲーム』第二部・25、柿沼瑛子訳) 「信じられない」とプローコプが考えにふけるようなおももちでつぶやいた。 (グスタフ・マイリンク『ゴーレム』今村 孝訳) 「人間の男の心は暗くて不潔です」グンガ・サムはいった。 (ロバート・シェクリー『人間の負う重荷』宇野利泰訳) エスターは身震いした。彼女は若者の辛辣なところが嫌いだった。 (フィリス・ゴットリーブ『オー・マスター・キャリバン!』1、藤井かよ訳) ウサギに見られるのをジャニスは恥ずかしがった。 (ジョン・アップダイク『走れウサギ』上、宮本陽吉訳) トレーが眼鏡をはずしてわたしを見つめる。その顔は少年のように無防備で、頬には愛する者にしか感じ取れない柔らかさがある。 (ダン・シモンズ『バンコクに死す』嶋田洋一訳) マキャフリイの容貌は、何百万の人間と同じ。目を離したら、雲の様子を正確に形容できないのと同じように、その容貌も形容できない。 (ジャック・ウォマック『ヒーザーン』2、黒丸 尚訳) 「上には何があるの?」とプティト・クロワは訊ねる (ル・クレジオ『空の民』豊崎光一・佐藤領時訳) 二階のベッドルームには、いつもスーザンがたくさんいる。みんな、自分が熟してくるとここで待つのだ。 (ケリー・リンク『しばしの沈黙』柴田元幸訳) この花たちはみんな君のためのものなんだよ、プティト・クロワ。 (ル・クレジオ『空の民』豊崎光一・佐藤領時訳) それはまちがいよ、エンリコ。人間的な問題に関するときにはいつもあなたはまちがうけれど。 (ピエール・プール『E=mc2』大久保和郎訳) ダニエルはかつてこれほど多くの白さを見たことはなかった。 (ル・クレジオ『海を見たことがなかった少年』豊崎光一訳) 隣では、わたしの少年の愛人であるセヴェリアンが、若者らしい気楽な寝息を立てて眠っていた。 (ジーン・ウルフ『調停者の鉤爪』18、岡部宏之訳) 小人は片腕をあげるとパリダに向かって伸ばす。 (フエンテス『脱皮』第三部、内田吉彦訳) 「ねえエレーン、ぼくらはいま、いくつくらいなんだろう」 (F・M・バズビイ『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』室住信子訳) クリスティーンはいま、自分が予想のつきやすい女だと思われているのではないか、と不安を覚えていた。 (アン・ビーティ『アマルフィにて』亀井よし子訳) 「すてきな名前ね」ジェーンはいった。「どうしてその名前に決めたの?」 (フリーマントル『フリーマントルの恐怖劇場』第2話、山田順子訳) ジョナサンとルーシーは、ある日、地下鉄の中で知りあったのだった。たまたま、とんでもない奴が、ただ退屈だという理由で、催涙弾を電車の中で放った。 (ベルナール・ウェルベル『蟻』第1部、小中陽太郎・森山 隆訳) 「行かなきゃ」とアリスが言った。 (コニー・ウィリス『リメイク』大森 望訳) 「なにもそんなに急ぐことはなかろう」とマークハイムはやり返した。 (ロバート・ルイス・スティーヴンソン『マークハイム』龍口直太郎訳) 「菓子パンをもう一つお食べよ」クラウドがアリスに言った。 (ジョン・クロウリー『リトル、ビッグ』I・[2]・III、鈴木克昌訳) (ジョージ・R・R・マーティン『フィーヴァードリーム』11、増田まもる訳) 「ああ、だがほんの一瞬だった」カドフェルは慎重に答えた。 (エリス・ピーターズ『悪魔の見習い修道士』2、大出 健訳) ドライズデールは美しい女性と一緒のところを人に見られるのが好きだった。 (P・D・ジェイムズ『正義』第一部・10、青木久恵訳) 人間がつき合わなければいけない相手の大半は変人なんだよ、とグランディソンは言い切っていた。 (トマス・M・ディッシュ『歌の翼に』6、友枝康子訳) 「まあ、あなた」とマグダレンは溜息をついた。 (エリス・ピーターズ『死者の身代金』8、岡本浜江訳) グルローズは、わたしの知った最も複雑な人間の一人だった。なぜなら、彼は単純になろうと努力している複雑な人だったから。 (ジーン・ウルフ『拷問者の影』7、岡部宏之訳) レサマが話をする、するとその話を聞いていた者は、好むと好まざるにかかわらず、すっかり人が変わってしまった。 (レイナルド・アレナス『夜になるまえに』レサマ=リマ、安藤哲行訳) 「クレティアン伯は過去の君とは別れたよ」ロレーヌが言った。「現在の君とももうじき別れる。そして今は未来の君の寸前で踏みとどまっている」 (ヴォンダ・N・マッキンタイア『太陽の王と月の妖獣』上・12、幹 遙子訳) ヴァージニアがゆっくりといった。「古い諺があるのよ。当たり前の人間は友人を選ぶが、天才は敵を選ぶ」 (グレゴリイ・ベンフォード&デイヴィッド・ブリン『彗星の核へ』上・第一部、山高 昭訳) ぼくは幸福だ。わかるだろう、ガーニイ? ナムリ? 人生に謎などまったくないんだ。 (フランク・ハーバート『デューン 砂丘の子供たち』第2巻、矢野 徹訳) 「生き方を知る人間は、ただ生きるもんだよ、ニコバー。知らん人間が定義したがるのさ」 (マイク・レズニック『ソウルイーターを追え』7、黒丸 尚訳) 人生を使うんだ、ハロルド。人生中毒になれ。 (ハーヴェイ・ジェイコブズ『グラッグの卵』浅倉久志訳) 「まず生きていくことさ」シャープはそっけなく言った。 (フィリップ・K・ディック『想起装置』友枝康子訳) |